三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保などを傘下に持つMS&ADインシュアランスグループが、日本経済新聞で2018年12月から1年間にわたって連載した企業広告シリーズ。シリーズの表紙となる1面広告を皮切りに、1日に2本の掲載を計6回、19年12月にシリーズのまとめとして見開き30段の掲載で締めくくった。
同社グループが定める30年に目指す社会像「レジリエントでサステナブルな社会」の実現のため、持続可能な開発目標(SDGs)を道しるべとし、社会的課題の解決にグループ一丸で取り組んでいる。広告では、一つひとつのテーマを丁寧に伝えた。
シリーズの特徴は、見開きではなくページをめくった2面にわたり広告を掲載する仕掛け(右図)。1面目で取り組む課題を説明し、隣のページをめくったすぐの2面目では同じ構図ながら鮮明なビジュアルで現した「いい方の未来」を提示。現在の選択によって未来が大きく変わることを示した。
また、読者に「そう遠くない未来の自分事」と感じられるよう、身近な案件について、2020から2050年に起こる変化を事実に基づき示した。
「いい方の未来」に向け継続するグループ一丸の取り組みを、これからも社会に発信し続けていくという。
SDGsは重要な広告テーマだ。長年、広告の多角的な研究に携わり、日経広告賞の審査委員長も務める青山学院大学名誉教授の小林保彦氏に、本シリーズ広告の感想を聞いた。
昨今、日本経済新聞にはSDGsをテーマとした広告の掲載が増えている。一方で、我々の近い将来の重要なテーマであるにもかかわらず、SDGsの取り組みを広告できちんと表現するのは難しく、表面的になぞっているだけの企業も間々あるのが現状だ。
その中で、MS&ADインシュアランスグループのシリーズ広告はSDGsの本質をよく捉えた秀逸な作品と言える。まず、ビジュアルとキャッチコピーがよい。具体的かつ分かりやすく、広告を目にする読者を意識した優しさが感じられるからだ。また、「ページ送り」の手法は「手元で」「めくる」という新聞広告の強みをうまく生かし、対比形式の表現にインパクトを与えている。何より、「いい方の未来へ」グループ一丸で取り組む真摯な企業姿勢が伝わってくる。
広告は奇をてらうより、地道に真面目に誰にでも分かる易しい言葉で本質を突いていくことで、長期的な企業の信用が高まるものだ。同社グループには、今後も分かりやすく思いが伝わる広告の継続を期待する。