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BtoB企業が取り組むべき、日本が遅れているマーケティング分野 (Ad Week Asia採録①)

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BtoB企業が取り組むべき、日本が遅れているマーケティング分野 (Ad Week Asia採録①)

B2Bの世界で顧客がサービス導入・購買を決定するまでの流れでは、認知から比較検討までをブランディングが、商談に持っていくまでをデマンドジェネレーションが担っている。ブランディングとデマンドジェネレーションについて、それぞれの考えと業務を互いにもっと理解できれば、マーケティングの効果はさらに高まるのではないか。このような問題意識から、日本経済新聞社とFinancial Timesは2019年のAdvertising Week Asiaで「結果に貢献するBtoBマーケティングを考える」をテーマにトークセッションを実施した。まず、デマンドジェネレーションについて、「商談創出のためのマーケティング手法とKPI」を3人のプロフェッショナルが論じた。

シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山一郎氏

1962年生まれ、中央大学卒。1990年9月にシンフォニーマーケティング株式会社を設立。データベースマーケティングのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。1997年よりBtoBにフォーカスした日本初のマーケティングアウトソーシング事業を開始。製造業、IT、建設業、サービス業、流通業など各産業の大手企業を中心に国内・海外向けのマーケティングサービスを提供している。
海外のマーケティングオートメーションベンダーやBtoBマーケティングエージェンシーとの交流も深く、長年にわたって世界最先端のマーケティングを日本に紹介している。

デマンドジェネレーションこそがBtoBマーケティングの本丸

BtoBマーケティングは日本では長らく日陰の存在だったが、最近ようやく日の目を浴びるようになったと思う。しかしマーケティング先進国の米国と比べると、まだ15年は遅れている。その理由としては、まずマーケティングという言葉に定義がないことが挙げられる。
BtoB企業が行うマーケティング活動は、大きく3つに分けられる。
まず1番目はリサーチ。リサーチの対象は市場、競合他社、先端技術、顧客などさまざま。対象が何であれ、最終的にはリポートにまとまられ、それで評価される。しかしこれは、海外と比べてそこまで遅れているわけではないだろう。
2番目はブランディングで、これもさまざま。企業ブランディングもあれば、製品ブランディングもある。例えば新幹線で見られる広告の多くはBtoB企業によるものだ。だからこれも、そんなに遅れているとはいえない。
日本のBtoB企業が最も遅れているのが3番目の案件創出、つまりデマンドジェネレーションなのだ。マーケティング部門がなかったり、「案件創出は営業の仕事じゃないの?」という感覚が強かったり、さらには「良い製品・サービスをつくれば、それで十分じゃないの?」という雰囲気も色濃く残る日本企業も多いのが実情だ。
しかし欧米では、このデマンドジェネレーションこそがBtoBマーケティングの本丸ととらえられている。だから人員も、予算も、そして知識もここに集まっている。デマンドジェネレーションを行う機能、組織は「デマンドセンター」と呼ばれ、そこで使うプラットフォームとしてマーケティングオートメーションがあり、近年はプレディクティブ・アナリティクス(予測分析)などの技術も登場している。

デマンドジェネレーションは費用ではなく投資、評価はROMIで

デマンドジェネレーションは4つのプロセスから成り立っている。1つ目は見込み客を集めることで、これは端的に言えば個人のメールアドレスが入った情報を集めることだ。2つ目はデータマネジメントで、多くの日本企業が苦手とするところ。「御社のデータマネジメントはどうなっていますか?」と質問すると、程度の差こそあれ要するに「ぐちゃぐちゃのまま」という答えが返ってくる。
 ぐちゃぐちゃのデータを整理整頓すると、3つ目のリードナーチャリング(見込み客の啓蒙・育成)に進める。自分たちの製品・サービスがどんな課題を解決するソリューションなのか、事例などのコンテンツを通してわかりやすく説明していく段階だ。そして、どの部署のどの役職の人がどのコンテンツにアクセスしたのかを分析し、4つ目の見込み客の絞り込みに入る。

商談創出にはデータマネジメントが欠かせない

 この4つのプロセスがデマンドセンターの仕事だ。そしてその質はROMI(Return on Marketing Investment)で評価されるべきだが、そこまでできている日本企業はまだ少ないだろう。例えば展示会の出展費用は、単年度で落とされていることが多いが、本来であれば管理会計上は資産計上すべき。なぜなら、減価償却していくべき投資だからだ。資産には維持管理費も発生するため、考慮する必要がある。
 これから多くの日本企業が海外に活路を見いだすなか、マーケティングの取り組みも海外基準になる必要があると強く感じている。

案件化率アップに欠かせないソリューションブランディング

 マーケティングとブランディングをどうつなげるかについては、まずBtoBマーケティングにおけるブランド、ブランディングは、一般的な文脈とは少し違う使われ方をしていることを意識しなければならない。ブランディングはコーポレートブランド、製品・サービスのブランド、ソリューションブランドの3つに分解でき、BtoBマーケティングで最も重要なのはソリューションブランドだ。
ある会社が持っている製品・サービスがどんな会社のどのような問題を解決できるか、または解決してきた実績をマーケティングに使う。ここに取り組まないと、問い合わせ数やイベント参加者数、見込み客からの案件化率が上がらない。取り組みとしては導入事例紹介が代表的だ。
 日本企業はコーポレートブランディングや製品・サービスブランディングが強い。だから「社名やロゴは知っている、見たことがある」となりやすいが、「何をしている企業なのか、何が得意なのかは知らない」となる。「このことに困ったら、あの会社に相談すればいい」と認知されているBtoB企業は少ないのだ。
ポイントになるのは、「困りごとを相談することは弱点をさらすこと」であり、弱点はなるべく多くの人にさらしたくなく、解決してくれると信じた人にだけ打ち明けたい。だからこそ、自社の製品やサービスはどのような問題を解決できるのかをきちんと打ち出していくことが重要であり、ソリューションブランディングの本質である。
 当社が提唱するLDO(Lead Data Optimization)では、BtoB企業にとってはSEO(検索エンジン最適化)をするよりも、リードデータ(ハウスリスト)に最適化したコンテンツをWebに用意してコミュニケーションをすることでより多くの成果を出すことができる。

リードデータに最適化したコンテンツを用意する

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