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セールスフォースのマーケティングモデル (Ad Week Asia採録②)

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セールスフォースのマーケティングモデル (Ad Week Asia採録②)

B2Bの世界で顧客がサービス導入・購買を決定するまでの流れでは、認知から比較検討までをブランディングが、商談に持っていくまでをデマンドジェネレーションを担っている。ブランディングとデマンドジェネレーションについて、それぞれの考えと業務を互いにもっと理解できれば、マーケティングの効果はさらに高まるのではないか。このような問題意識から、日本経済新聞社とFinancial Timesは2019年のAdvertising Week Asiaで「結果に貢献するBtoBマーケティングを考える」をテーマにトークセッションを実施した。まず、デマンドジェネレーションについて、「商談創出のためのマーケティング手法とKPI」を3人のプロフェッショナルが論じた。

セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 デマンドジェネレーション グループ シニアディレクター 田中裕一氏

1994年ネバタ州立大学ラスベガス卒業後、ソフトバンクフォーラム、ガートナージャパン、日本マイクロソフトにて展示会、プライベートイベントの主催から、展示会への出展、社員向けインセンティブ等のイベントマーケティング業務に従事。2012年6月から、セールスフォース・ドットコムにてSalesforce World Tour Tokyo等のイベント企画・実行に携わり、現在はイベント、キャンペーン、デジタル、マーケティングアナリティクス&オペレーションズからなるデマンドジェネレーショングループを統括。

「マーケティング最新事情」から、四つの話題

 弊社で全世界4,100人以上のマーケティングリーダーを対象とした調査をもとにまとめたレポート「マーケティング最新事情」から、四つの話題を紹介する。

 一つ目は「マーケティングは部門間の顧客体験をつなぐ役割を果たしている」こと。私たちマーケティング部門も社内の営業部門や他の部門から「もっと顧客体験を意識したキャンペーンやイベントを打ってほしい」と求められている。二つ目は「データの一元化のハードルを上げる新たな現実」で、データソースが増加する中、顧客に関するデータが複数箇所にまたがって存在しているケースは少なくないだろう。そうした状況では、顧客体験をつなぐマーケティングアプローチは不可能だ。弊社では顧客データを一元化し、過去の接触の履歴がすべて参照できるようにしている。三つ目はAI(人工知能)の活用で、顧客のトレンドを先読みして、顧客が求めるアプローチを提供することが必要になっている。その先読みのためにAIを活用し、データドリブンなマーケティングを進めているところだ。最後の四つ目はリアルタイムエンゲージメントで、どんどん入ってくるデータを活用するスキルを継続的に学ぶ組織であることが不可欠だ。

共通の目標から部署の目標を設定

 マーケティングを効果的に進めるためには、まずゴールを明確にする必要があり、私たちはそれを売り上げにしている。その目標に対して、どれだけの規模の商談につなげていくか、過去のデータから割り出していく。私はデマンドジェネレーションチーム所属だが、他のクリエイティブチームや製品チームもそれぞれ異なる目標を持っているが、それらを通じて最終的に達成したいのは売り上げだ。そのためにブランディングやデマンドジェネレーション、製品開発があり、しかもすべてつながっているととらえているのが、弊社にとってのマーケティングだ。
 ゴールを設定する際に、例えば会社全体の商談金額の目標を500とし、そこから生まれる契約金額を50とする。逆から見れば、契約金額の目標を50としたら、商談金額の目標は10倍にしなければならないということだ。商談金額目標はさらに、500のうち大企業から300、中小企業から200、といった具合にセグメントで分けて設定できる。そこでマーケティングは、商談金額の例えば30%、150の貢献をすると目標を設定することができる。

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会社全体とマーケティングの目標

以上のように、部署は異なっても最終的な目標は共通させて、それぞれの部署の目標を設定することは可能だ。その上で、マーケティングは商談金額150を生み出すために具体的に何をしていくかを考え始められる。

商談の数量と速度、価値を意識したマーケティング

弊社が考えているマーケティングの流れは、①商談の数を増やす「商談の発掘」、②契約までの速度を上げていく「商談の加速」、③「商談機会の拡大」だ。

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数と速度、価値を意識したマーケティングモデル

①の前にはリードジェネレーションがあるが、リードを創出した後にすべきことは商談を発掘することだ。そのためには、リードの質ももちろんだが、ここでは数の方が重要になる。特に中小企業にアプローチする場合はカバー率が重要なので、数が大事になってくる。その上で、商談を発掘していく。②の前提として、弊社では、商談の進み具合を8段階で管理している。商談ができる状態を「2」とすると、「8」の契約を結ぶまでに進むため、商談を加速させていかなければならない。③については契約した顧客に対して、製品を一つ使っているところを、二つ目、三つ目を新たなソリューションとして販売し、顧客の成功を支援していく。すると自ずと商談機会が増えていく。
 また、私たちはクラウドでのサブスクリプションサービスを提供しているので、いわゆるダブルファネル、新規顧客と既存顧客という二つのつながったファネルという考え方も使っている。

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新規顧客と既存顧客という二つのつながったファネル

全部門のKPIが連携する「The Model」

次に、The Modelという、弊社のマーケティングのモデルを紹介したい。契約という一つの目的に向かって、マーケティング、インサイドセールス、セールス、サポートという四つの立場が、一連の流れのなかで、それぞれ明確に定義された仕事をする。例えば、マーケティングは需要を創出するために展示会を開催し、そこで集めた潜在顧客を契約確度別に分類する。インサイドセールスはその顧客データを参照して、24時間以内にフォローアップの電話をし、顧客の事情に合った会話をして、得られた情報をデータベースに入力する。
 こうした分かった商談数をセールスに共有し、彼らは契約に向けて前述のスピードを意識した提案をしていく。受注後はサポートのマネジャー(カスタマーサービスマネジャー)が、セールスフォースのさまざまな活用法をオンラインでもイベントでも紹介し、興味を持ってもらえれば、新たなサービスを提供していく。しかも、それぞれの立場でKPI(成果指標)が設けていて、さらにこの流れのなかで、川上のKPIは川下のKPIの前提となっている。だからこそ、四つの立場のKPIが事業拡大に直結し、一つのプラットフォーム上でつながるのだ。

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全部門KPIが事業の拡大に直結

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