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「ブランドの『資源化』発想が重要」 内田和成・早稲田大学ビジネススクール教授インタビュー

グローバル
「ブランドの『資源化』発想が重要」 内田和成・早稲田大学ビジネススクール教授インタビュー

日本経済新聞社はこのほど、Financial Times Commercial Insightの協力の下、日本企業のグローバルな企業イメージを測定するGlobal Corporate Reputation Studyを実施しました。当調査はFinancial Timesの読者から募ったグローバルなリサーチパネルを対象に、FT500企業にリストアップされている日本企業35社のイメージを多角的に聞き取りしたものです。

こうした企業のグローバルなブランドイメージの重要性について、早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授にお話をうかがいました。

企業の評価軸、多面的に

最近はSDGsやESGという言葉がよく使われているが、企業の評価軸が売上、利益、株価といった数字だけでなく、多面的になってきた。企業がどの面をアピールしていけばよいのか、が以前より難しくなっている。消費者は、「この企業は好感が持てる」「なくてはならない企業か」といった軸で見ているので、企業は「何を目的にして今何をやっているのか」をアピールすることが重要だ。

日本企業の問題点は、「良いものをつくっていれば分かってもらえるだろう。企業の良し悪しも財務諸表を見ればわかる」と思っていることだ。しかし、世界ではそれでは通じない。「なぜ海外に出ていくのか。何を目指すのか」を考えて、それを訴求することが大事となる。

ブランド資産は使わないと意味がない

英国のコンサルタントであるサイモン・O・シネックが考案した「ゴールデンサークル」という理論がある。意思決定を促すのに一番重要なのは、WHY(信条や信念)であって、HOW(どう伝えるか)やWHAT(自社製品のどこが優れているか)は、それに付随して決まるものにすぎない、というものだ。今やまさにそういう時代になった。WHYを説明するために、顧客や取引先あるいは社会とのコミュニケーションによって、自分たちがやっていることを世に知らしめたほうがよいだろう。

また、「ブランドは資産だ」と言われているが、資産は使わないと意味がない。「ブランド価値を高めた後、何に使うのか」、つまり「資源化」という発想がないといけない。この調査の対象企業は、海外売上の比率も高い。外国人に伝えるには、日本人の感覚だと言い過ぎぐらいでちょうどよいのではないか。

「何のためにブランドを高めるのか」を考える

日本企業は、「今は投資をしてブランド価値を高めていく時期なのか」、それとも「ブランドを利用して資源化する時期なのか」を見極めてほしい。多くの日本企業はグローバルで認知度が低いので、前者が多いだろう。その際、「何のために高めるのか」はきちんと考えたほうがよい。

価格戦略でプレミアムを取りたいのか、採用の質を高めるのか。特にBtoB企業はブランド価値を高めることの意味が特定される。例えば、取り引きを促すために認知してもらうことや、リクルーティングに有利になることなどだ。BtoB企業はブランド価値を高めることと、資源化することをセットで考えることがより重要になってくる。ただやみくもに取りくんでしまうと、お金の無駄遣いになるケースも多くなる。一方、BtoC企業の場合は、認知して購買に結びつける。優良顧客になってもらうことが目的となり非常に明確だ。

共通して言えることは、経営にとってブランドのポジションを把握することが重要であること。そしてランキングが上位の企業は、既に認知されているので、資源化してうまく事業に活用することを考えたほうがよいということだ。

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