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【アジアにおけるESGの潮流】Nikkei Asia ESG Initiative ウェビナー G(ガバナンス)編を開催しました

グローバル
【アジアにおけるESGの潮流】Nikkei Asia ESG Initiative ウェビナー G(ガバナンス)編を開催しました

日本経済新聞社グローバル事業は7月9日、英字ニュース媒体Nikkei Asiaの説明会をオンライン開催しました。環境や社会課題の解決に向けた取り組みが世界で活発になるなか、経済成長の著しいアジアに注目が集まっています。今回は「E(環境)S(社会)G(ガバナンス)」における「G」に焦点をあて、Nikkei Asiaの奥村茂三郎編集長からアジアにおける課題とNikkei Asiaの報道姿勢についてご紹介しました。また、ESG投資の専門家である法政大学人間環境学部の長谷川直哉教授からは、企業によるCX(コーポレートガバナンス・トランスフォーメーション)の重要性について講演していただきました。本レポートではその内容についてご紹介します。

分かりにくい、でも最も重要な「G」

奥村編集長によると「Gの概念は企業のEとSの取り組み内容を決定する重要な要素」です。環境課題への対応ではカーボンゼロを目指したエネルギー資源の確保や電気自動車へのシフト、社会課題の解決では人権やそこから派生する労働といった比較的イメージしやすい概念です。それらに比べて目に見えにくい概念ではありますが、こうした企業の取り組み内容や姿勢を決定づけるのが、企業の取締役会、経営者による経営判断です。持続可能な社会を実現するための課題意識を持ち、そこへ向けてどんな事業計画を作り、人材活用を推進するか。そのトータルが「ガバナンス」に集約されていると言います。

グローバル投資家向けに株価指数を提供するFTSEは、企業のガバナンスを評価する項目として「腐敗防止」「企業統治」「報酬・任期」「リスクマネジメント」の4つを挙げています。不正な蓄財や多様性を欠いた経営の意思決定機関は、企業価値を毀損することにつながります。企業トップがあまりに高い報酬を得ていれば従業員や株主、地域社会への還元を怠ることとなり、事業運営上のリスクにうまく対応できなければ事業の継続性が損なわれます。実際に、GPIFの調査によるとESG活動のさまざまなテーマのなかで企業がもっとも高い関心を持っているのが「コーポレートガバナンス」。企業の成長には、正しい企業統治が欠かせないと感じるビジネスマンは多いのです。

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変われるか日本型ガバナンス

Nikkei Asiaではいま、企業統治で揺れる東芝のガバナンス問題に最も力を入れて報じています。2020年の定時株主総会を巡り、経済産業省と一体となった一部株主への「圧力」が表面化し、社長が退任するなど経営の混乱が続いています。株主総会運営に関する報告書は、政官民が濃密に結びつく日本型企業統治の異形を浮き彫りにしました。奥村編集長は「このコーポレートガバナンスの問題をどのように報じるかはビジネスメディアにとって非常に大切なこと」と断言。「会社は誰のものか」という絶対解のない問いに対し、株主、経営者、従業員、地域社会、国や政府を幅広く紹介し、それぞれの立場を公平に取り上げながら報じていくことの重要性について指摘しました。

実際に、日本企業のガバナンスへの取り組みは世界の先進諸国に対し遅れを取っています。3月に掲載した、日本企業の取締役会、管理職に占める女性比率を紹介した記事では、欧米企業に比べてかなり低い8%にとどまります。もっとも、アジア全体でみると中国やベトナムといった旧社会主義国では意外にも女性の企業トップが多いそうです。封建的な意識が根強かったり、儒教の影響を色濃く残したりしている国ほど女性の経営参画が遅れているという傾向をNikkei Asiaならではの視点で紹介しました。

「外の目」になる社外取締役の重要性

次に長谷川教授が登壇し、企業のCX(コーポレートガバナンス・トランスフォーメーション)について説明しました。長谷川教授はまず「日本企業の取締役会の多くは機能不全におちいっている」と指摘。日本が京都議定書を締結した2002年から14年にかけて、米欧の先進主要国がGDP(国内総生産)を30~60%も延ばしながら温室効果ガスを7~25%削減した一方、日本はGDP成長率がマイナス0.4%、温室効果ガスの削減も1.9%にとどまりました。日本企業の経営者の意思決定と、それに基づく行動が結果を生み出せなかったことを示しています。

日本の取締役会機能を考える際に重要なのが社外取締役の存在です。社内の出世レースを勝ち抜いて内部昇格したCEO(最高経営責任者)が大半を占める日本企業では、取締役会も内部で育った人間ばかりで構成されてしまい、組織外への意識は遠のきがちです。社会との関係性のなかで自社の存在意義を示さなければ信頼と共感も得られない時代において、こうしたプロセスを経た人材だけでは議論の幅も狭まりかねません。社外取締役という「外部の目」を取り入れることで、社会が求める企業の姿を描けるようになります。「そこに向かって戦略を策定できる企業とそうでない企業とでは、将来の成長軌道に大きな差が出る」と長谷川教授は断言します。

投資家に選ばれる「攻めのガバナンス」を

東京証券取引所は22年春に発足する「プライム市場」に上場する企業に対し、取締役会の3分の1以上を独立社外取締役で構成するよう求めました。社外取締役の増員は日本企業にとって足元の喫緊の課題です。数を合わせるだけでなく、取締役会の実効性も求められます。投資家が日本企業の取締役会の評価をするうえで、最も関心を寄せるのが実効性や社外取締役の選任理由・活動内容です。その企業の活動目的に沿った経歴やスキルを持つ人物を登用できているか、そして期待した運営をできているか、投資家は目を凝らして見ています。

「攻めのガバナンス」にはステークホルダーに向けた積極的な情報発信も欠かせません。ガバナンスは大事だけれど見えにくい。だからこそ正確な情報を伝え「見える化」することが求められます。上場企業の外国人株主比率が6割を超える日本において、サステナブル経営への取り組みを英文で開示できている企業はまだ多くありません。投資家の期待を呼び込むためにはグローバル発信する姿勢も重要になってきます。長谷川教授は「CXに能動的に取り組む企業には投資家の資金が流れやすくなるという循環がますます加速する」と指摘しています。

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7月9日開催Nikkei Asia メディア説明会のアーカイブ視聴が可能です ※要視聴登録

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