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Withコロナ禍においての
SDGs/ESGへの実践とブランド化の可能性4

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Withコロナ禍においてのSDGs/ESGへの実践とブランド化の可能性4

CSR、CSVとSDGs

中長期経営計画の中核にサスティナビリティを位置付ける企業が増えている。「イノベーション」と「サスティナビリティ」の両輪で戦略を具体化、推進していくものだ。これまでも企業はCSR(企業の社会的責任)や環境に取り組んできた。しかし、ESG投資の拡大や国のカーボンニュートラルの目標などによりSDGsの推進が求められ、特に上場企業においては更なる取り組みと非財務情報の開示が求められるようになった。
ESG情報に関しても、グローバルの統一基準が議論され、近く整うだろう。投資家をはじめとしたステークホルダーに対して企業はESG項目を常に開示していく社会になったのだ。そして、それらが評価され無形資産として企業価値を形成していく。よって、今までのCSRに加え、経営の主軸にESG項目すなわち「サスティナビリティ」を位置づけることが必須だ。
そして重点項目を、オポチュニティ(機会)とリスクに分けて議論していくことになる。例えば、SDGsの普及により消費者意識が変化しオーガニック市場などが拡大する、女性活躍が進んでいる、ガバナンスの体制が進んでいる、などの項目は高評価につながるのだ。反対に、エネルギー問題、女性活躍が進んでいない、取締役のダイバーシティが進んでいないことなどのリスク要因を抱える企業は多い。環境や生物多様性、あるいは児童労働などに課題がある原料の調達は難しくなり、その分コストがあがる可能性があること、カーボンニュートラルに対応する投資が必要なことなどはリスクだ。当然この議論は長期視点だ。
これらの取り組みが本業そのものと位置付けられるかは大切だ。ESGに関する支出は本業と位置づけられれば投資、そうでなければコストだ。投資の視点も将来キャッシュフローを生み出す事業そのものや、リスクを低減するということもある。これらの情報はすべて非財務情報であり、これをブランディングすることにより、無形資産を大きくしていくということが、ESGに取り組む投資のリターンと考えることもできる。つまり、ESGに対しての取り組みをブランド化できれば投資として考えることができるのだ。

コミュニケーションが課題

課題はコミュニケーション手法だ。日本人には善行は人に言わないという陰徳の文化がある。自社は良いことをしていますということをストレートに伝えることは難しい。しかし伝わらなければブランディングはできない。
CSRやサスティナビリティの活動は、NPOや外部機関と協業することが一般的になってきている。彼らから活動報告を広めてもらうことも一つの手段だ。また、アウトサイドイン、つまり社会や外部の意見を聞いていくことがSDGsの特徴なので、外部の有識者などを入れて議論していくことのなかで、第三者評価をしっかり外に伝えていくことも良い。
また、ストーリー性も大切だ。ESGの取り組みは、これもやっています、あれも対応していますというすべて対応していますという報告にどうしてもなりがちだ。しかし、自社が重点的に取り組む社会課題はこれで、なぜならばこういった過去の取り組みがあって、そのためにこのリソースを活用して、どのような方針で、いつまでにどう対応していくといった話は、投資家からも説明を求められている。いずれにしてもSDGsの取り組みをどのようにコミュニケーションしていくかは企業の課題だ。
特にSDGsの教育を受けてくる次世代、つまりSDGsネイティブ世代は、今までの世代とは違う価値観をもつ。全国の高校生、大学生にSDGsの意識調査を実施したところ、消費性向や就職意向について、SDGsに関して強い意識を持っていることが分かった。特に高校生や女子についてその傾向は強い。アンケートでも積極的にSDGsに取り組んでいる企業名として、スターバックス、サントリー、ユニクロ、無印良品などが上がる一方、「どこまで本当に取り組んでいるかは調べる必要がある」「先生やメディアなど他者の意見の情報が必要」など、彼らの企業を見る目は鋭く厳しい。ある大学生がインターン先で社員とコミュニケーションすると「A社の若手社員は自社のSDGsのことをまったく知らなったし、興味もない感じでした」と感じ、その情報は学生間ですぐ共有される。実際に学生から筆者にも「どの企業の取り組みが、サスティナビリティが高いのでしょうか」「社会貢献性の高い企業はどこですか」との質問を良く受ける。働くのであれば、社会貢献性の高い仕事をしたいと思う優秀な大学生は多い。
この世代にはサスティナビリティの取り組みのコミュニケーションは大切となってくる。特に共に顔の見える活動をすることは有効だ。まずはこの世代へのブランディングの取り組みが急務であろう。

高校生・大学生を対象にしたSDGsへの意識調査結果

横田アソシエイツ代表取締役

慶應義塾大学大学院特任教授

横田 浩一(よこた・こういち)氏

日本経済新聞社を経て2011年横田アソシエイツを設立。15年より慶應義塾大学大学院特任教授。釜石市アドバイザー。セブン銀行SDGsアドバイザー。共著に『SDGsの本質』『明日はビジョンで拓かれる』『愛される会社のつくり方』『ソーシャル・インパクト』等

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