新型コロナ:企業の資本支援12兆円規模 政府検討、安全網を強化  :日本経済新聞

企業の資本支援12兆円規模 政府検討、安全網を強化
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2020/5/22 18:00
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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は大企業や中堅・中小企業向けに12兆円規模の資本支援の枠組みを確保する。日本政策投資銀行や官民ファンドなどが劣後ローンや株式取得を通じ、財務基盤が悪化する企業を支えたり事業再編投資を後押ししたりする。企業を素早く支援できるよう安全網を強化する。

今月下旬に編成する2020年度第2次補正予算案や財政投融資計画に盛り込む。

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12兆円の枠組みのうち、約6兆円は政投銀や日本政策金融公庫など政府系金融機関による劣後ローンの活用を想定する。劣後ローンの資金調達は増資に近い効果を持ち、格付けの低下を防いだり、金融機関の追加融資を受けやすくなったりすることが期待できる。貸し手が経営に深く関与しないため企業側も受け入れやすい。

残る6兆円は出資などの枠組みに活用する。大企業・中堅向けには、すでに政投銀が設けている1千億円の出資枠を倍増するほか、産業革新投資機構(JIC)を通じて再編や成長投資に向けた資金を用意する。中小企業向けには、地域経済活性化支援機構を通じて事業再生や地域ファンドの拡充をはかる。債権買い取りファンドも整える。

融資による支援策も強化する。4月以降も融資需要が増えていることを踏まえ、政府の無利子融資制度などを拡充する。民間金融機関と合わせて60兆円以上の資金繰り対策の規模を確保する方向で調整する。

政府が企業向けの資金対応を大幅に拡大するのは、コロナを巡る情勢が依然、不透明なことがある。現状では多くの日本企業の財務体質は比較的強固で破綻懸念があるわけではない。ただ、秋以降も景気悪化に歯止めがかからなければ、健全企業でも財務悪化のリスクがあり、雇用にも悪影響が出かねない。「資本支援がすべて使われるとは思っていないが、早めに安全網を用意し、企業や市場を安心させる」(政府関係者)狙いがある。

海外でも資本支援を拡充する動きが相次いでいる。ドイツは大企業向けに1千億ユーロ(約11兆円)の優先株や普通株による出資基金を設立した。米国やフランスなども航空業界の支援に乗り出している。(税財政エディター小滝麻理子、秋山裕之)

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