投資家向け広報(IR)の効果を高めるには、自社に合った方法を工夫する必要がある。しかし、優れた取り組みを参考にしたくても、他社のIR担当者と交流する機会は限られ、公表されている情報も少ないのが実情だ。そこで、ここではIRコミュニケーションの工夫や課題について様々な企業の取り組みを紹介していく。今回は、ロート製薬経営企画部経営管理グループマネージャーの加藤大樹氏に話を聞いた。
現場の思い伝える
当社では、機関投資家向けのIRは経理財務部に専任担当を置いています。一方、個人投資家向けの取り組みは近年まで停滞していました。「もっと当社を知ってほしい」との思いから2018年度にリスタートし、経営企画部経営管理グループが活動を担っています。
どうしたら当社に興味を持ってもらえるか試行錯誤する中、商品開発の担当者に「どういう思いでその商品をつくったのか」について投資家イベントで語ってもらう機会を設けました。当社の考え方や事業に共感してもらうには、週報、月報、四半期報告だけでは足りません。担当者本人が苦労話を交えてストーリーを語る方が腹落ちしやすく、心に響くはず。実際、多くの参加者から好意的な反響をいただきました。
当社はスキンケア商品を多く取り扱っていますので、投資家イベントでは目元ケアのコツなどをお伝えする「美と健康のミニレッスン」も行っています。健康のお役に立つことが当社の使命です。社史や実績をお話しするだけでなく、当社の価値を体験いただいた方が会社のことをよく分かっていただけると考えています。
オンラインの利用推進
当社の売上構成比の約6割を占めるのはスキンケア商品で、約4割が海外売上だとお伝えすると、驚かれることが少なくありません。社員が抱いている自社のイメージと一般の認識とのずれを感じる瞬間です。目薬や胃腸薬の印象が強いのは悪いことではありませんが、「食」や「再生医療」など様々な挑戦をしていることが十分に伝わっていないことは課題です。
そこで、今後はオンラインでの情報発信にも力を入れていきます。株主専用サイトを立ち上げて、タイムリーに情報を得られるようにします。株主イベントや優待の申し込みなどもできるようにする予定です。
「日経IR・個人投資家フェア」をはじめ、当社に合ったIRイベントには積極的に参加したいと考えています。初めはお土産やサンプルが目当てでも、来ていただいたことをきっかけに当社のことをもっと知ってもらえればうれしく思います。
投資家イベントなどで自身の思いを語った社員からは「やってよかった」「こんな感想をもらえた」といった喜びの声が聞かれます。一般のエンドユーザーとは少し違う視点からフィードバックをいただけることが、よい刺激になっているようです。
IR活動は当社を支えてくれる一人ひとりの大切なステークホルダー(利害関係者)と向き合う大事な仕事だという認識が、社内に浸透しつつあります。多くの部門と日常的にコミュニケーションを取る経営企画部の強みを生かして、全社を巻き込みながら、効果的なIRの在り方を模索していきたいと思います。