「億り人」とは、株式投資などで億単位の資産を持つ投資家のこと。億単位の株式を日々運用している人たちの投資スタイルとは、一体どのようなものでしょうか――。
日本経済新聞社(調査機関:日経リサーチ)では、2025年1月末に20歳以上の株式保有者を対象に調査を実施し、1,667人の個人投資家から回答を得ました。調査では、投資経験が5年未満の初心者から20年以上のベテランまで、運用金額が「200万円未満」から「1億円以上」に及ぶ個人投資家たちの投資スタイル、情報収集法などを聞きました。今回、3回にわたり、「個人投資家たちの実態」を掘り下げます。第1回となる本コラムでは、1億円以上の株式を運用する「億り人」(73人)に焦点を当て、その投資傾向を紹介します。
「億り人」の平均像――所有株式は50銘柄以上、週に1度売買する
「億り人」が保有する株式数について調査したところ、「50銘柄以上」(35.6%/全体平均7.1%)と回答した人が最も多い結果となりました。保有する株の種類では「プライム上場株」(94.5%/平均83.3%)が圧倒的に多く、外国株を保有している割合(42.5%/平均15.8%)が高いことも特徴でしょう。株式の売買頻度に関しては、「週1回程度」(23.3%/平均8.3%)と、ほかの層よりも頻繁に取引を行う傾向が伺えます。
「億り人」は、どのような情報を活用しているのか
「億り人」は、情報収集に積極的です。「売買する際、チェックしている情報」を尋ねたところ、重視しているのは、「個別企業の株価、板(気配値)情報」(78.1%/平均73.5%)や「財務・株価指標(PER、ROE、一株利益、配当利回り)」(74.0%/平均54.7%)。ほかの層と違うのは「経営戦略や経営トップの発信するメッセージ」(30.1%/平均16.3%)や「機関投資家が発行するレポート」(21.9%/平均9.4%)にも目を通している割合が高いこと。「億り人」ならではの傾向です。
財務や株価情報を得る情報源は、「会社四季報」(53.4%/平均31.7%)、「新聞」(52.1%/平均44.6%)が2トップです。「投資先企業のホームページ」(34.2%/平均25.0%)や「企業の統合報告書・アニュアルレポート」(17.8%/平均12.5%)をチェックしている割合も高いです。いまやインターネットで情報収集するのは「普通」の行動ですが、投資候補先のホームページを訪れ、統合報告書までチェックしているのは特徴的と言えます。一方で、「SNS上の有識者や個人投資家が発信する情報」をチェックしている人(8.2%)は全体平均8.4%よりも低い結果が出ました。他人の意見に左右されるのではなく、自ら収集した情報をもとに、独自の判断をしています。
株式投資の際、「億り人」はどんな指標に注目しているのか?
では、「億り人」たちは、どのような目的で株式投資を行っているのでしょうか――。
もちろん目的は人によって様々なのですが、総じて言えるのは「銀行金利よりも高い運用利回りを得るため」(61.1%/平均64.0%)よりも、「長期的な利益を上げるため」(81.5%/平均64.2%)という人が多いということでしょう。
そのため、短期的な「株価推移」よりも、「企業の業績・決算情報」「PER・PBRなどの株価指標」「経営戦略や経営計画」といった成長性に関連する指標を重視しています。加えて、数値的なデータだけではなく、「業種・業界の動向」や「経営トップの理念やパーソナリティ・人柄」にも注目しています。確かに、経営トップの姿勢によって、企業の未来は大きく変わるもの。成長力を評価する大事な材料と言えるでしょう。
加えて「なぜ『個人投資家向けのイベント』に参加するのか」という点についても調査しました。
あなたは「個人投資家向けのイベント(セミナー・講演会・展示形式のフェア)」に参加したことがありますか?――こう尋ねたところ、全体では34.4%が「参加したことがある」と回答しました。「億り人」に限ると、その割合は49.3%とほぼ半数近くにのぼります。参加したイベントとしては、「日本経済新聞社主催『日経IR・個人投資家フェア』」(55.6%/平均38.3%)がトップでした。参加する目的としては、「自分が知らない有力企業の情報を発掘する」(58.3%/平均46.3%)ためであり、「経営者の声を直接聞くこと」(50.0%/平均39.7%)、「会社案内や株主向けの各種資料を入手すること」(47.2%/平均34.1%)を理由として挙げています。
企業のIRサイト以外では、どこで情報収集をしているのか?
前述した通り、投資対象の企業ホームページを訪れ、IR情報を収集している「億り人」も少なくありません。ところが、すべての企業が充実したIRサイトを備えているわけではありません。そのため、「機関投資家との情報格差がある」(35.6%/平均19.0%)、「自社サイトでのIR情報の発信量の少なさ」(21.9%/平均16.9%)といった不満を抱いている投資家もいます。その結果、「億り人」たちは、企業サイト以外の情報源も活用し、情報の幅を広げています。見ているサイトは、「証券会社のウェブサイト」(49.3%/平均42.2%)や「日経電子版」(45.2%/平均33.5%)です。また、60.3%の「億り人」が日本経済新聞を読んでいるというのも情報収集に積極的な特徴が表れています。
まとめるならば、「積極的な情報収集」と「長期的な視点に基づく投資」。これが「億り人」の投資スタイルと言えます。企業の成長性や経営戦略を重視し、企業が発信する統合報告書などにも目を通す。IRイベントにも参加するなど、直接的な情報を収集しています。自分で判断し、できるだけの情報を集めることを厭わない姿勢が伺えます。
「億り人」をはじめ、積極的に情報収集をする個人投資家が多く参加する「日経・東証IRフェア」については下記サイトをご覧ください。