メディア環境が複雑化する中、同一のコンテンツも複数のメディア・デバイスで展開されることも増えています。例えばテレビです。番組は、以前では放送波のみでしか見ることができませんでした。今ではTVerのような見逃し配信サービスでも見ることができます。
こうしたデバイスシフトのさきがけは、新聞メディアでしょう。例えば日本経済新聞は、1996年からコンテンツをインターネットでも展開してきました。現在、新聞社が運営するメディアは、紙とオンラインの両方があるわけです。
こうしたメディア・デバイスの違いは、広告の観点でどのような効果をもたらすのでしょうか?ここでは、日本経済新聞メディアを対象にデータで可視化しました。
リーチの拡大
二つのメディア・デバイスに出稿することで期待できる効果として、リーチ拡大があります。日本経済新聞メディアで、新聞(日本経済新聞、紙面ビューアーのいずれか)と電子版それぞれの利用重複状況をビデオリサーチの生活者データACR/exで分析しました(図表1)。
新聞のみ、あるいは電子版のみのユーザーも存在する一方、両方利用するユーザーも多いという実態です。この結果は、広告出稿の際に両方のメディア・デバイスに出稿することで、同一のコンテンツを好むターゲットへのリーチ拡大が期待できることを示します。
態度変容の拡大
効果が拡大するのはリーチだけではありません。広告に接した後に起こる態度変容も同様です。ここでは、日本経済新聞メディアの新聞と電子版両方のメディアに出稿した際に期待できる態度変容リフト効果をACR/exの中にある「広告の印象」を用いて推計しました。推計はビデオリサーチの特許分析手法であるクロスメディア推計を用いました。
日本経済新聞紙面(日本経済新聞、紙面ビューアーのいずれか)への出稿効果を軸に、日経電子版の出稿を加えた場合に期待される態度変容効果を、商品・サービスの購買ファネル別に可視化しました(図表2)。
これをみると、各購買ファネルで2倍から3倍の態度変容リフトが期待できます。特にミッドファネル「欲しくなる・利用したくなる」や「ネットで調べる」は3倍を超えており、両方出稿する場合の効果リフトが強い結果でした。
新聞紙面と電子版両方のメディアに出稿することで、リーチだけでなく広告への反応、つまり態度変容もより高まることが期待できます。
先ほどとは逆に、日経新聞電子版への出稿効果を軸に日本経済新聞紙面(日本経済新聞、紙面ビューアーのいずれか)の出稿を加えた場合の期待効果も同様に可視化しました(図表3)。
これをみると、1.2倍前後のクロスメディア効果が期待できることがわかります。リフトがより期待できるファネルを確認すると、先ほどの図表2と異なることがわかります。ここではトップファネルの「印象に残る」「詳しく知る」が特に効果的で、結果KGIに近い「実際に利用・購入する」も1.2倍伸長が期待できる結果です。
このように、新聞紙面と電子版は同一のコンテンツであるにもかかわらずプレイスメントが異なるため、態度変容上の役割も異なります。これは、紙面を主軸にした場合と電子版を主軸にした場合でリフト効果が大きくなるファネルが異なるという点からも明らかです。両方を組み合わせ出稿することで、フルファネルの効果を発揮しやすくなると考えることができます。
いかがでしょうか。この結果をみると、紙の新聞だけ、あるいは新聞社のデジタルメディアだけに出稿するのではなく、両方に出稿するほうがリーチ面でも態度変容面でも効果的といえます。
こうしたクロスメディアによる効果のリフトは、過去の広告効果研究の結果知見(例えば猪狩・河原,2014など)とも一致します。それに加えて、新聞メディアの持つコンテンツパワーにも起因するのかもしれません。同じコンテンツを紙とデジタル両方のデバイス・媒体でそれぞれの特性を生かした展開を行う新聞社ならではのソリューション力といえるでしょう。
ぜひ出稿の際はご参考ください。
【参考文献】
猪狩良介、河原達也(2014)「クロスメディア効果を考慮した広告キャンペーンの分析 : 広告認知と態度変容効果のモデル化」 『日経広告研究所報』 48(2), 24-30,
株式会社ビデオリサーチ ビジネスデザインユニット シニアフェロー
吉田正寛
2008年(株)ビデオリサーチ入社。
広告コミュニケーションにおけるプランニングや効果検証に有用な
フレームの構築・分析ロジックの研究開発に従事。
専門は広告メディア特性、各広告メディア・コンテンツ固有の役割に関する研究を継続中。
また、近年は広告領域だけでなく様々な領域でデータを活用した各種業務支援を行う。
