賀来賢人さん、松本若菜さんを起用した新聞広告・テレビCMで「超ワクワクする未来を実現する会社」と訴求するキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループ。2007年の社名変更以降、低迷していた社名認知率を向上させる取り組みを始めた。広告効果データを徹底活用し、認知から興味、理解へと段階的に展開する戦略とは。
※「NIKKEI FUTURE VISION 2025 ブランドとパーパスで描く企業の未来」(2025年11月12日)での登壇内容をもとに構成しています。
──キヤノンMJさんは「超ワクワクする未来を実現する会社」という広告コピーが印象的です。企業ブランディングの考え方をお聞かせください。
当社は2007年にキヤノン販売からキヤノンMJへ社名を変更しましたが、社名認知率が下がり、なかなか改善できていませんでした。キヤノンのプロダクトブランドの認知は高いものの、当社グループのコーポレートブランドの認知が課題でした。
コミュニケーションを強化する中で、2024年1月末に、パーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」を対外公表しました。ただ、パーパスそのものの言葉をそのまま社会に認知いただくのは簡単ではありません。ステークホルダーのアテンション(注目・関心)を取りにいくフェーズでは、パーパスのエッセンスをよりキャッチーな表現に昇華させる必要があると考え、「超ワクワクする未来を実現する会社」というコピー開発に至りました。
──コミュニケーション設計の全体像は。
コーポレートコミュニケーションのプロセスは3フェーズに分けています。①社名認知率を上げる認知フェーズ②当社の業容の認知率を高める興味フェーズ③相談意向率が向上する理解フェーズ──です。
一連のコミュニケーションを通して「人が何かのアクションを起こすとき、最初に頭の中に浮かんでくる会社になること」を目指しています。
──3つのフェーズごとに広告戦略を変えられたそうですね。
各フェーズで効くメディアを組み合わせました。認知フェーズではテレビCM、新聞の全30段広告、屋外・交通広告、デジタル広告など「登場感」を出せるメディアでアテンションを取りにいきました。興味、理解のフェーズでは、社会課題解決にどう貢献しているのかという具体性が重要になるため、記事体広告やタイアップ企画を重視しました。
──広告クリエイティブには日本経済新聞への広告出稿を分析した結果も反映されていると伺っています。
2021年頃から日経と様々な取り組みをして試行錯誤も重ねてきました。
出稿後は「日経電子版 紙面ビューアー」のログデータで、主に3つの指標を見ています。1つ目が「広告視認率」(紙面ビューアーで1秒以上表示)、2つ目が「広告認知率」(同3秒以上)、3つ目が「ビューアーリンクのタップ数・タップ率」で、全体平均やBtoB企業平均値など多角的に分析しながら自社出稿のポジションを把握しています。
──媒体としての日本経済新聞をどう活用されていますか。
日経のビジネスパーソン層への確実なリーチは揺るぎないものです。2024年9月に出稿した30段純広告の視認率は平均値より30ポイント以上高く、大幅な認知拡大につながったと思っています。人間の忘却曲線を考慮し、その1週間後のタイミングでCMに出演している松本若菜さんと当社社長が対談する記事体広告を掲載したところ、ビューアーリンクのタップ数が平均値の2倍となり、当社がどのように「超ワクワクする未来」を実現していくのか具体的な取り組みを紹介することで、業容認知にも繋がりました。日経の営業担当と密な議論ができたのも成功の要因です。
「就活生の両親にも当社を知ってもらうための意味合いを込めました」(宮下氏)
──キャンペーン全体としての成果はいかがでしたか。
第三者の調査機関の調査で、2024年のキャンペーンでは社名認知率が向上しました。またKPI毎にどのメディアの貢献度が高かったのか分析したところ、新聞広告は「業容認知」と「好感度」で1位、「社名認知」でも3位という結果で、目的に応じてメディアの役割分担を設計する重要性を改めて実感しました。
日経新聞への出稿を通じ、社員エンゲージメントの向上にも寄与していると感じています。社内アンケート結果では、「ビジネス拡大に向けてさらに貢献したい」「日経新聞に掲載されることが嬉しかった」という声が上位2つでした。社外へ発信することで、社員のモチベーションにも繋がり良いブーメラン効果がでています。
──現在の取り組みと今後の展望をお聞かせください。
認知率が一度上がったから終わりではなく、継続が何より重要だと考えています。2025年も30段広告をはじめ、テレビCMや屋外広告・デジタル広告も継続して展開しています。
前年のキャンペーンでは「業容認知率」や「相談意向率」はまだ十分とはいえない状況だったため、2025年以降はそこを高める施策も強化しています。11月12日の日経新聞では、対談記事の視認率を向上させるため、CM出演中の賀来賢人さんの純広告をめくると、松本若菜さんと当社社長の対談第2弾が現れる仕掛けの広告を実施しました。
コミュニケーション部門はコストセンターと見られがちで、広告宣伝には大きな費用もかかりますが、「目に見えない価値」を生み出す、という観点でも日々重責を感じながら取り組んでいます。だからこそ、人の想い・熱意・情熱が非常に大事だと考えています。社内外ともに関わってくださる皆さんと同じ想いで、同じ方向に向かって進んでいくと、それが大きなエネルギーとなっていく。そして、当社グループ1万8,000人それぞれに想いが伝播していき、社員からさらにその先のステークホルダーにも想いが伝わり、非常に大きな力が動いていくことを実感しています。当社グループは、カメラやプリンター・ITソリューション事業で培った技術力を発展させて、未来志向で社会課題を解決し、希望に満ちた明るい未来をつくっていきたいと考えています。それをコミュニケーションの力で加速できるように取り組んでいきたい。