コラム

三井住友海上火災保険
震災を風化させず「防災考えるきっかけ」を

新聞 イベント

広告が感情に寄り沿うことで、読者はその広告に共感し深い印象を残す。三井住友海上火災保険は大きな2つの震災が起きた1月17日と3月11日に、「自分で考えることから、未来は始まる。」というキーメッセージの新聞広告を展開し、共感を生んだ。自然災害リスクが高まる今、損害保険会社がどのような問題提起を行ったのか。

※「NIKKEI FUTURE VISION 2025 ブランドとパーパスで描く企業の未来」(2025年11月12日)での登壇内容をもとに構成しています。

三井住友海上火災保険 広報部 CXアドクリエーションチーム 中山 みこと氏

──今回の企画は、どんな問題意識からスタートしたのでしょうか。

日本は災害大国といわれていますが、自然災害による経済損失の増加は、世界的にも大きな課題になっています。損害保険会社に求められている役割も、有事の際の補償だけではなくなってきています。

事故や災害の瞬間だけでなく、その前後を含めた時間軸の中で、防災・減災や回復までを支えていくことで、社会全体のレジリエンス(強靱さ)を高めることにつながります。今回の広告も、万一への備えから回復まで、日常から地続きに考えるきっかけをつくりたいという意識が出発点でした。

──「社会的モーメント(社会の関心が集まる日)」である、阪神・淡路大震災から30年、東日本大震災から14年経つ日に出稿されました。

発生からそれだけの年月が経ったものの、復興の途上にある地域や方々は今もたくさんいらっしゃいます。震災を風化させない一方で、これから先の備えや支え合いを考える機会が必要だという思いがありました。

内閣府が2022年に行った『防災に関する世論調査』では、「自然災害への対処などを家族や身近な人と話し合ったことがない」と答えた方が約35%いました。そのうち6割の方は「話し合うきっかけがなかったから」という理由を挙げています。この結果からも、日常生活に根ざした、より実践的な防災知識や避難行動を考え・話し合うきっかけを提供するのも損害保険会社の役割だと認識しています。

1月17日、3月11日は、社会全体が震災を思い返し、災害や防災について考えるきっかけとなる日です。そして、地域の皆さまと共に防災・減災に向き合い続ける当社の姿勢を示す上でも、これらの日は非常に象徴的なモーメントだと捉えました。

──クリエイティブ制作にあたって、被災体験がある人を取材したと伺いました。

実際に被災された方々から、様々なお話を伺いました。印象に残っているのは、小学生のときに阪神・淡路大震災を経験された方です。当時、不安な気持ちを大人に話したくても「皆が忙しそうで遠慮してしまい、話しかけることができなかった」とおっしゃっていました。

別の方からは、「避難所は誰かが運営してくれるものだと思っていたが、実際にはその場にいる住民が一緒になってルールづくりから始めなければならなかった」というお話も伺いました。

当事者のリアルな声を伺う中で、事前に“もしも”を考え、話し合う機会がないために、現場で想定外の負担や迷いが生じたり、周囲の困りごとに目を向けることが難しい状況があることを知りました。ここから、実際の災害時にどんな状況が起き得るのか、読み手が想像できるようなクリエイティブをつくりたいという強い意識が生まれました。

──具体的な紙面の工夫は。

災害時もし自分がそこにいたらどうするか、紙面の前にいる人に「考える」というアクションを起こしていただけるよう設計しました。例えば1月17日の広告では「子どもたちの遊び場、どこにつくる?」という問いかけを、避難所のイラストとともに掲載しました。避難所のイラストの中には、様々な人の困りごとを表す雲形の吹き出しや、「ボランティアなど住民以外の出入りが多い」といった、状況・条件を説明する四角い吹き出しを散りばめています。

──コンテンツ内容は、中高生向けの防災教材ともつながっているそうですね。

はい。広告の問いや情報は当社が開発した中高生向け防災教材「体験型防災教育コンテンツ HIRAQ(ヒラク)」の一部を活用しました。HIRAQは、帰宅困難や長期化する避難所生活などの状況を想定しながら、「そのとき自分はどう動くか」「周りとどう協力するか」を参加者同士で議論する、ボード型のディスカッションコンテンツです。

当社は全国に営業拠点を持つ強みを活かし、教育委員会や学校、自治体の皆さまと連携しながら、中高生や地域の方々と一緒に防災を考える機会を広げています。広告を出稿して終わりではなく、防災を考える機会を継続的に生み出していきたいと考えています。

──掲出後の反響は。

調査やSNS上でも高く評価する声を頂いたほか、広告をご覧になった複数の団体から直接お電話をいただいたのは印象的でした。「この広告を配布させてほしい」「どうすれば教材として使えるか」といったお問い合わせがあり、同じような課題意識を持っておられる方が多いことを実感しました。

出典:J-MONITOR調査(2025年1月17日/2025年3月11日)

社内でも、社内報で広告について共有したところ、「防災に対する当社の役割を自分事として考え、形にしていきたい」「高校向けの出前授業でこの広告を活用した」といったコメントが寄せられました。

社内外で会話や行動のきっかけになることができ、今回の取り組みに手応えを感じています。

──新聞メディアの価値をどう見ていますか。

15段の新聞広告は、物理的な大きさとしてもインパクトがあります。大きな紙面を、家族や職場、営業先の方々と一緒に覗き込みながら議論できるのは、新聞ならではの体験です。また紙というかたちで手渡しすることができ、後からでも広げて読み返していただけます。

特に今回の「皆で考え・話し合う」ことを狙いとしたコンテンツと相性が良かったと感じています。防災のように、一人ひとりが自分の状況に引き寄せて語り合っていくテーマでは、新聞の「場」をつくる力は大きいと実感しました。

──改めて、今回のモーメントを捉えた広告展開により、ブランド価値の向上にどんな影響がありましたか。

損害保険は無形の商品で分かりにくいと思われがちですが、当社は地域との協定や取り組みを通じて、社員が地域と連携した活動を行っています。こうした中で、皆さんと一緒になって考え、日頃から支えあう姿勢を伝えたいと考えたアウトプットでした。社内外から反響をいただき、少しでもそのきっかけになれたと感じています。ご家庭での防災の話題としても、引き続き少しでもお役に立てれば幸いです。

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