コラム

IRの役割が深化-実態調査が示すIRの経営接続

日本IR協議会が実施した「IR活動の実態調査2026(※1)」から、上場企業のIRの現在地がみえてきます。回答企業の96.7%(917社)がIR活動をしていることからも、IRを実施することは大前提で、IRが何を担っているかが重要になってきています。調査結果からは、IRの役割そのものが変化しており、企業の取り組み方によって、明確な差が生まれ始めている実態がみえてきました。今回のコラムでは、実態調査の結果をもとにIRの役割の深化を読み解きます。

IR担当部門の権限が増加、経営中枢へ

「IR活動の実態調査2026」の結果から、重要な変化として浮かび上がったのは、IRの役割そのものの転換です。IR担当部門の社内での権限・立場を聞くと、「社内の各部門の情報を集約し、責任をもって開示できる立場にある」が89.0%(87.6% ※2)のほか、「取締役会や経営会議などに陪席し、社内情報を共有したり、株主・投資家の意見を説明する立場にある」が70.0%(71.0%)、「社外取締役や監査役に、株主・投資家の意見や資本市場の状況を報告している」が60.6%(55.3%)といった経営に関わる部分でも高いスコアを示しています。

実際、株主・投資家の声を経営にフィードバックする動きも強まっています。株主・投資家などの意見を社内へ報告する仕組みについて「取締役会や経営会議などで、IR担当役員やIR担当者が報告する機会を設けている」が72.7%(68.3%)、「経営トップに定期的に直接報告する機会を設けている」が62.1%(57.6%)と続き、IRが投資家の声を経営に接続する存在になっていることがわかります。

東証の要請、企業に浸透

変化の背景には、2023年に東証が出した「資本コストや株価を意識した経営」への要請があります。この変化については、「IRの重要性が増した理由 vol.1」で詳しく解説しています。

IR実態調査で、資本コストの算定状況を聞くと、「算定し公表している」が36.2%(16.6%)、「算定しているが非公表」が32.7%(42.5%)で、資本コストを算定している企業は68.9%(59.1%)となり、資本コストを公表する企業の割合が前回(24年調査)と比べて19.6ポイントと大幅な増加となっています。一方、「算定していない」が17.9%(25.1%)と、7.2ポイント減少しており、東証の要請を受けて資本コストを算定する企業が増えていることがうかがえます。

時価総額の向上を約40%が実感

このように進化したIRは、実際に企業価値の向上につながっているのでしょうか。

調査結果は、興味深い答えを示しています。

資本コストや株価を意識した経営への対応を進めた結果、「株式時価総額の向上」を実感している企業は39.9%、「PBRの改善」を実感する企業も30%強に達しています。

IRの取り組みが、一定の企業においては市場評価の向上につながっていることが読み取れます。一方で、見逃してはならない点として、「特段の成果はない」とする企業が29.6%存在しています。IRの高度化とともに、成果が出る企業と出ない企業の差が明確に表れ始めている可能性があります。

今回の調査結果は、IRが「開示業務」から「説明業務」へと変化し、投資家と経営を接続する役割を担ってきていることを示しているといえます。そして、その取り組み方によって、市場の評価に大きな差が生まれ始めていると言えそうです。今後は、IRが「いかに説明し、信頼を得るか」という点が、企業と資本市場の関係を支えるうえで、より重要な役割を担っていくと考えられます。

(※1)「IR活動の実態調査2026」は、2026年1月現在の全株式上場会社4,088 社に対し、2月9日から3月25日まで調査を実施し、948社から回答を得ました(回収率23.2%)。回答企業の内訳は、日本IR協議会会員企業が393社(同61.6%)、非会員企業が555社(同16.1%)でした。日本IR協議会では、会員企業に対して、調査結果を提供しています。日本IR協議会については以下をご参照ください。

https://www.jira.or.jp/

(※2)本文中の()内は 24年調査データです。

キーワード
CONTACT US

まずはお問い合わせください

貴社の課題にあわせて様々なご提案をいたしますので、
まずはお気軽にご相談ください。

成果がわかる 広告事例集