- 代表取締役 社長執行役員 野田 俊介 氏
広告と言うより一幅のアートという印象だ。
小さな文字に目を凝らすと著名な詩人谷川俊太郎氏の言葉がつづられ、それを包み込む淡い色合いの写真。ストップモーションで捉えた水滴の様々な姿と色感は、人々の多様な声に優しい視線を向ける谷川氏の言葉の〝温度〟と親和する――。
創業40周年のコールセンター大手ベルシステム24ホールディングスが9月20日付日本経済新聞朝刊に掲載した全面広告には、商品の名前も写真もない。社名の文字も小さい。同社はAI(人工知能)活用などデジタルトランスフォーメーション(DX)を掲げるが今回「コールセンターを支える多くの人1人ひとりにメッセージを伝えたい」(野田社長)と、敢えて社業の源であるアナログな「声」への回帰を目指した。そのコンセプトは論理でなく見る者の感性へ静かに語り掛けるような仕上がりに結実した。
谷川氏が書きおろした文に、デザインはアートディレクターの森本千絵氏が担当。背景部分の撮影に丸1日かかった労作は業界にも好感を呼び「伝えたかった人へ思いを届けられた」(同)という。太い文字や強い主張より、感性の記憶は長く残る。そんなことを感じさせられるクリエーティブといえそうだ。