
- 経営統括本部 総務部広報室 作良 総俊 氏
苫米地 弥恵子 氏
見開き紙面いっぱいに左右から弧を描く線路と道路。そこでコンテナ満載の長い貨物列車と何台ものトラックが行き交う。陽光が差すJR神戸駅周辺の俯瞰(ふかん)写真の躍動感は、読者の目を「この国の物流が試されている。」という右上の文字に誘う。
JR貨物が8月29日付日本経済新聞朝刊に掲載した全30段の広告は、2019年から自社のブランディングを狙って始めたシリーズの5回目。トラックの運転手不足が懸念される「2024年問題」を取り上げ、持続可能な物流網の共創へ「鉄道とトラックが互いの長所を生かし短所を補いながら乗り越えていこう。そんな思いを込めた」(総務部広報室の作良総俊サブリーダー)。
最大650トン(10トントラック65台分)を運べる貨物列車の運転士1人の労働効果は、単純計算すればトラックの65倍。従来の広告手法なら、顧客拡大へ鉄道の利点を前面に出す場面だ。
だが、近距離の輸送効率に長所があるトラックの存在感を公正に視覚化し「競争から協調へ」と訴えた。国内の貨物鉄道輸送は今年で150年。自社利益だけを求めない「社会派」ともいえるクリエイティブは、物流業界をけん引し、脱炭素など様々な社会課題と向き合ってきた同社なればこそのメッセージといえそうだ。

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